キャプテン・トム

今朝のニュースで報じられていますので、ご存知の方も多いと思います。

英国のキャプテン・トム 英陸軍退役大佐トム・ムーア氏が2月2日逝去されました。100歳でした。ここ数週間肺炎を患っており薬を処方されていたのでワクチン接種は出来なかったそうです。先週検査で新型コロナウイルスに感染していることが分かり、入院したと1月31日に報じられたばかりでした。

最初にムーア氏がニュースに取り上げられたのは、昨年4月のことでした。コロナ対策の最前線にたつ、NHS(英国民保健サービスの医療機関)を支援するために、4月30日の100歳の誕生日までに1000ポンド(約14万円)の寄付金を集めようと、歩行補助具を使って自分の庭の端から端(25メートル)を一日5往復するという目標を立てました。NHSにはマスクも防護具も足りないと報じられている頃でした。その活動がBBCに紹介されると、寄付は誕生日には、3000万ポンド(約43億円)となり、最終的には150万人から3279万4701ポンドが集まりました。この寄付金はNHSの施設や設備、回復して退院した患者を支援する団体の支援活動に充てられているという事です。

寄付金が500万ポンド(約7億1800万円)になった時のキャプテン・トムのコメントをご紹介します。

「歩行チャレンジを始めたとき、こんなに寄付が集まるとは思ってもいませんでした。本当にすごいことです。NHSは私たちにとって大変に価値があります。医療従事者は朝晩、自分たちの命を危険にさらしている勇敢な人たちです。我々は彼らの勇気と努力をたたえなくてはならない。今の状況は戦争と同じです。医師と看護師は最前線にいて、我々は後方にいます。私たちは彼らの必要なものを補給してやらなければなりません」

第二次世界大戦中の20歳の時に徴兵され、旧日本軍とのビルマの戦いを経験しているムーア氏らしいコメントです。

この活動により、7月にはエリザベス女王からナイトの称号が与えられたニュースを覚えておられる方も多いと思います。94歳の女王から100歳のムーア氏への授与式は、高貴でありながら微笑ましく慈愛に満ちた光景でした。

また、誕生日には、イギリスの俳優であり歌手のマイケル・ポール氏が「You will never walk alone」(あなたは二度と一人ぼっちで歩くことはない)と100歳のキャプテン・トムに捧げています。これは、サッカーの人気クラブ「リバプールフットボールクラブ」の愛唱歌で、みんなが口ずさめる曲のようです。歌詞をご紹介します。

『君は独りぼっちじゃない』

詞:オスカー・ハマースタイン二世
曲:リチャード・ロジャース

♪嵐のなかを進むなら
顔を上げて前を向こう
暗闇を恐れるな
嵐の向こうには青空が広がっている
小鳥の優しい歌声が待っている

風に向かって進もう
雨にうたれても歩みを止めず
たとえ夢破れようと
行こう、進むんだ
希望を胸に抱いて行こう
君は独りぼっちじゃない
君は独りぼっちじゃないんだ♪

一人で始めたキャプテン・トムの活動を応援し、みんなで新型コロナウイルスに立ち向かおうという勇気の出る映像です。

キャプテン・トム トム・ムーア氏のご冥福をお祈り申し上げます。